2013年3月26日火曜日

ミザリー(Misery)/1990年アメリカ


ミザリー(Misery)
1990年
アメリカ
108分
サスペンス
 

◎1990年度アカデミー賞主演女優賞受賞 

監督 ロブ・ライナー
原作 スティーヴン・キング
脚本 ウィリアム・ゴールドマン
製作 ロブ・ライナー
    アンドリュー・シェインマン
音楽 マーク・シェイマン
撮影 バリー・ソネンフェルド
編集 ロバート・レイトン
翻訳 戸田奈津子

出演
ジェームズ・カーン:ポール・シェルダン
キャシー・ベイツ:アニー ・ウィルクス
リチャード・ファーンズワース:バスター保安官
フランシス・スターンハーゲン:ヴァージニア
ローレン・バコール:マーシャ・シンデル



■名言・迷言
「人間の正義を超越した正義、私はそれに従います。」  
「今はあなたのすべてを愛しているの」
by アニー ・ウィルクス

あらすじ
人気恋愛小説「ミザリーシリーズ」の著者、ポール・シェルダン(ジェームズ・カーン)
彼は最新作にて主人公のミザリーに終止符を打ち、
新たな作品へと転向する予定だった。

作品をコロラド山中のロッジで書き上げ、猛吹雪の中エージェントの元へ急ぐポール。
しかし、誤って雪道から車ごと転落してしまう。

そこで脱出を手伝い、手厚く介抱してくれたのが
アニー ・ウィルクス(キャシー・ベイツ)だったのである。
看護師として、骨折した両足をギプスで固定するなど
完璧な処置を行うアニー。
しかも彼女は自称「ナンバーワンのファン」。
なんと“偶然”にもポールの熱心な読者だったのだ。

命の恩人であるアニーに、ポールはミザリーシリーズの最新作の
最初の読者になってもらいたいと言う。
大喜びのアニー。
しかし、その展開を知るや豹変してしまう。
「ミザリーの復活小説を書き上げろ」
これが彼女から突き付けられた脅迫だった…。


■M田感想(ネタバレ)
寝たきり状態のポール、中年女性の温厚なアニー。
一見、心温まるラブストーリーかと思いきや、である。

「…いやあ、熱狂的なファンって怖いですね」
という言葉が聞こえそうな映画です。はい。

でもね、他人事とも言い切れない自分としては
(熱狂的なファン、という意味です!監禁、暴行は除く!)
なんともグサリ、とくる動機。

だけどね、二次創作ならまだしも、
作家本人を監禁状態にして書かせるだなんて。
アニー、思い切ったな。
かつてミザリーに気持ちを重ねていた弱った時期から
めっきりたくましく成長。
ある意味、そこまで人を変えてしまう恋愛小説「ミザリー」読みたいわ。

「人間の正義を超越した正義、私はそれに従います。」 

 この台詞は、小説ミザリーシリーズに登場する言葉なんだそうです。
ミザリーが証言台に立った時言い放った台詞で、
この言葉にアニーは胸を打たれたそう。

…偶然、バスター保安官(リチャード・ファーンズワース)もこの台詞が気に入り、
紙の切れはしにメモをしておくんです。
これが、重要な手掛かりになる。

つまり、大ファンであるアニーも証言台で使用した台詞だったからです。
実は彼女、過去に関係者が多数変死を遂げている。
病院の部長、夫、患者…
そして看護師である彼女に疑いがかかる。
無罪を訴える彼女が言ったのが、この
「人間の正義を超越した正義、私はそれに従います。」
 …完全に陶酔、そこではアニーはミザリーになりきっていたわけです。

この記事を見かけたバスター保安官は、アニーこそポールの行方を知る
人物だと推理し、押しかけるのだが…。

バスターーーーーー!!!
だめだーーーーー!!!!

…この映画全体に言えることですが、極端に視野が狭い。
ポールは寝たきり・車椅子だという状況から
主観的に画面を切り取っているわけで
つまり背後だとか横だとか、外だとか
間取りすら怪しい環境にいるわけです。

アニーしか網羅出来てない、閉鎖的空間。
ますますサスペンスっぽくなってきますね。

バスター保安官の奥さんがやたらとエロいばあさんなのは
この映画のヒロインだからってことなのかな?
車内の膝さすりは、やっばいです。

あとホラーシーンになると、そわそわ聞こえてくるクラシック曲。
古典的だけども、やはりハラハラさせられますね。
使用楽曲は以下のIMDb(海外サイト)に一覧がありました。
http://www.imdb.com/title/tt0100157/soundtrack

チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番変ロ短調作品23(たぶん)
に合わせてタイプライトするシーンがあるんですけど
どんだけ監禁されてんのよ!っていう。
時間だけがサクサク進むのに、一向に状況が良くならない。
ポールは大した役者です(小説家だけども)。


キャシー・ベイツ、今もハリーズローなどで大活躍されている女優さん。
現在は64歳。
乳がんの手術で両乳房を切除したとの声明を出されていましたが、
まだまだ長生きできるんだそう。
9年前には卵巣がんを克服しているそうで、
これからも活躍が楽しみな方ですね!


ちなみにこれ、
“TSUTAYA発掘良品~100人の映画通が選んだ本当に面白い映画~”とWOWOWの
コラボ企画で観たものです。
映画監督の入江悠さんと俳優の斎藤工さんの対談も合わせて拝見しました。

入江悠さんといえば、『SR サイタマノラッパー』('09)。
同じシリーズモノを作る立場としての、苦しみを語っていらっしゃいました。
思うように違う世界観を打ち出せない、というのは
たしかに圧迫感があるのかもしれません。
しかも、横から脅迫を受けているんですから
人気作家のポールだって「書けるか!!」って話ですよね。
しかも偽りの物語だとか言うし…下手なことできません。

また、はみ出さんばかり画面いっぱいにアニーの顔が
映し出される演出もまた、サスペンスとして素晴らしい。

斎藤工さんがおっしゃっていましたが、
この映画は小物の使い方が上手ですね(ファッションではなく)。
冒頭の「3つの道具」
・タバコ
・グラス
・ワイン Dom Pérignon
小説が書き終わると、ポールが必ずいただくという3つの道具。
これをうまーく使っています。
アニーはDom Pérignonのことをドン・ペリグノンと言ってしまいますが
正しくはドン ペリニヨン
ちょっとアニーが可愛く見えるシーン。

また猛吹雪、というのもミソで、車のわだちや転倒したポールの車を覆ってしまう難敵。
うまいねー。密室空間にもなるし、外部からの連絡手段を根絶できる(開通してたけど)。


癇癪持ちだった幼少期のような、純粋なアニー。
ブタのモノマネなんて、まさにいじらしい子どものよう。
ですが、彼女が時たま見せる暴力的な一面が
末恐ろしい。
映画史に残る、愛すべき悪役のひとりに
まちがいなく入ることでしょう。

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